
「編集思考」でブランドをつくる。
ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケートが考える、これからのデザイン
株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート
雑誌づくりをルーツに持ちながら、現在はブランディング、サービス開発、空間設計、グラフィック、Web、コンテンツ制作など、領域を横断したクリエイティブを手がける株式会社ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート。
同社が一貫して大切にしているのは、「情報をどう編集し、どう価値として届けるか」という視点です。単にデザインを“つくる”のではなく、企業やブランドが持つ本質的な価値を整理し、文脈に落とし込み、ストーリーとして社会に届けていく。その姿勢は、同社が掲げる「編集思考」という言葉にも表れています。
今回のインタビューでは、雑誌制作から現在のブランディングへとつながる思想、クライアントに伴走するプロジェクトの進め方、デザインに対する考え方、そしてこれからの時代に求められるクリエイター像について伺いました。
今回は、執行役員・シニアマネージャーの高橋さん、チーフデザイナーの足立さん、プロジェクトマネージャーの今井さん、人事の池澤さんにお話を伺いました。
雑誌づくりをルーツに持つ「編集型」のデザイン会社
── まずは、ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケート様の事業内容について教えてください。
高橋さん
私たちは1999年に創業したデザインコンサルティング会社です。
私たちのルーツとして特徴的なのは、雑誌デザインからスタートした会社だという点ですね。雑誌づくりというのは、単純にビジュアルをつくるだけではなくて、いろいろな情報を一つのテーマや文脈で編集し、読者の心を動かすストーリーとして届けていくメディアだと思うんです。
例えば同じ情報でも、どこを切り取るか、どういう順番で見せるか、どういう言葉で伝えるかによって、受け取り方は大きく変わります。そのような「情報を編集して価値に変える」という感覚が、今のブランディングやサービス開発にもかなりつながっていると思っています。
現在は雑誌デザインそのものを手がける機会は以前ほど多くありませんが、ゼロからブランドを立ち上げたり、サービスを設計したり、マーケットそのものを生み出していくようなプロジェクトに期待いただき、ご一緒するケースが増えています。
「何をつくるか」ではなく、「何が必要か」から考える
── 最近はどういった案件が多いのでしょうか。
高橋さん
ブランディングやサービス・商品開発、リブランディングの案件が多いですね。
ブランドやサービスが成長していくうえで、そもそも何が必要なのかということから考えていきます。なので、ご相談いただく段階ではアウトプットが決まっていないケースもかなり多いですし、逆に制作内容が決まった状態でご相談いただくこともあります。
どちらの場合でも大切にしているのは「伴走する」という姿勢です。最近はブランディングを掲げる会社も増えていると思いますが、弊社は社内にしっかりデザインチームがいるので、アウトプットをつくりながらコミュニケーションを取っていけるところも特徴です。
戦略だけを話すのではなく、「実際にこういうトーンはどうか」「こういう見せ方はどうか」と具体的なクリエイティブを交えながら進めていける。そこはコンサルティング主体の会社との違いとして評価いただくことも多いですね。
「編集思考」とは、散らばった価値を再発見すること
── 求人ページでも「編集思考」という言葉を拝見しました。改めてどういう考え方なのでしょうか。
高橋さん
編集というのは、散らばっている情報を一つのテーマや切り口で整理していくことだと思っています。
例えば「ハワイ特集」でも、「初めてのハワイ」「5回目のハワイ」「大人のハワイ」「自転車で旅するハワイ」では、全然違う価値になります。同じ“ハワイ”というテーマでも、どの視点で切り取るかによって、届ける価値やコンテンツが変わるんです。
それってブランドづくりにもすごく近いんですよね。企業や商品って、魅力や情報自体はたくさん持っているんですが、そのままだと散らばっていることが多い。そこに対して「何を価値として捉えるか」「どういう文脈で社会に提示するか」を考えていく。
そうすることで、ブランドの見え方や伝わり方は大きく変わってきます。私たちは単にデザインをつくるというより、「何をどう伝えるべきなのか」という編集の視点をかなり重視しています。
ファシリテーションそのものがクリエイティブになる
── 実際のプロジェクトでは、かなり深く入っていくケースも多そうですね。
高橋さん
そうですね。ブランディングワークにおいてはファシリテーションを行うことも多いです。
以前、UCC様の商品ブランド開発をご一緒した際は、複数部署の方に関わっていただいていたので、定例会形式のディスカッションを重ねながら、それぞれが持っている考えやブランドへの想いを整理していくプロセスを大切にしていました。ただヒアリングをするだけだと、なかなか情報がまとまらない側面もあるので、会議の中でゴールを探りながら、時には言葉で整理したり、デザインの叩き台を制作したりしながら、皆さんの意見を集約しています。
同じプロジェクトに関わっていても、部署間の横のつながりが少ないことはよくありますが、そういう皆さんとのディスカッションやプロセス自体が、私たちはクリエイティブの大事な一部だと思っています。「デザイン会社」というと最終的なアウトプットを制作するイメージを持たれることも多いですが、実際にはその前段階の価値整理や認識合わせの部分にもかなり深く関わらせていただいています。
「提案力」がデザイナーの価値になる
── デザインについて、印象に残っている事例があれば教えてください。
足立さん
案件によって考え方はそれぞれ違うんですが、自分にとって印象深いプロジェクトの一つが「BENCHMARK TOKYO」です。外苑前にあるカフェ兼コミュニティスペースで、単に飲食店をつくるのではなく、人が集まり、新しい出会いやコミュニケーションが生まれる場所を目指したプロジェクトでした。
この案件ではブランドコンセプトの設計から空間づくり、ビジュアル表現まで、かなり広い範囲で関わらせてもらいました。オーナーや外部プロデューサーの方々と議論を重ねながら進めていったんですが、最初から全部がきれいに決まっていたわけではなくて、かなり紆余曲折もあったんです。
途中で方向性を見直したり、一度ゼロに戻して考え直したりもしました。ただ、その中でも「最終的にどういう場所にしたいのか」という軸だけは持ちながら進めていました。
いろいろな切り口で提案することも、そのゴールに向かうための道を増やすことだと思っています。なので、自分としては「提案力」が強みかなと思っています。
ロゴも一般的には3案くらいを出すことが多いと思うんですが、その裏では数十案を制作し、検討を重ねています。選択肢を広げながら、どこに本当に可能性があるのかを探っていく感覚ですね。
デザインは「センス」よりも「完成度への追求」
── デザインの完成度の高さは、どこから生まれているのでしょうか。
足立さん
デザインは、単に絵を描くことではないと思っています。つくること自体は誰にでもできますが、大切なのは、その完成度をどこまで高められるか。自分自身がどれだけ高い基準を持ち、細部まで突き詰められるかが、デザイナーとしての大きな違いになると考えています。
デザインは、アートディレクターから細部まで徹底的にチェックされます。何度も修正を重ね、「もっといけるよね」という高い基準を求められることも少なくありません。その一つひとつの積み重ねが自分の限界を引き上げ、完成度や精度につながっているのだと感じています。
デザインはセンスだけでなく、「どこまで完成度を追求できるか」。その姿勢が、クオリティの差につながるのだと思います。
入社当初は「自分のアイデアで勝負したい」と思っていました。でも今は、それ以上に「美しいものをつくりたい」という想いが強くなっています。
クライアントの期待に応えながら、自分自身も心から良いと思えるものを提案する。その両方を大切にすることが、期待を超えるクリエイティブにつながるのだと思います。
良いアウトプットは、多様なインプットから生まれる
── 普段から意識しているインプットなどはありますか。
足立さん
月に4本は映画を観ますし、スタッフクレジットを見るのも好きです。電車広告や書店、街並みなど、日常のあらゆるものがデザインされているので、常にアンテナを張っています。
さまざまなものに触れながら、「これは良い」という基準を自分の中に蓄積していくことが、表現の幅やアイデアの引き出しを広げることにつながっていると感じています。
今井さん
オフィスがある青山・外苑前という立地も大きいですね。近くにはギャラリーもありますし、青山ブックセンターのような書店もあります。デザインやアートに関わる展示やイベントも多く開催されているので、仕事帰りにふらっと立ち寄れる環境です。
わざわざ「インプットしよう」と構えなくても、自然と刺激を受けられるんです。クライアントとの打ち合わせの合間に気になる展示を見に行ったり、メンバー同士で「あれ見た?」みたいな話になったりすることもあります。
そういう意味では、このエリア自体がクリエイティブの一部になっている感覚がありますし、日常の延長線上にインスピレーションを得られる環境があることは、すごく恵まれていると思います。
高橋さん
また、私たちは自社内でスタジオ運営もしているんですが、それも単なる場所貸しではありません。今まで接点のなかった方々と出会えたり、新しい仕事や企画につながったりすることもあります。
社外のクリエイターや企業の方々が出入りすることで、自分たちだけでは得られない視点や刺激を受けることも多いです。そうした外部との接点が、結果としてクリエイティブの幅を広げてくれていると思います。
自主性を前提としたチームづくり
── 御社らしいカルチャーについて教えてください。
今井さん
クリエイティブチームは、5チーム体制でプロジェクトごとに制作を進めています。案件によってはチームを横断して携わるメンバーもいて、業務量や案件の特性に応じて、偏りを柔軟に調整しています。
また、プロジェクトのローンチ後には、制作の背景やコンセプト、プロセス、ストーリーを社内で共有する発表会を実施しています。
ただ、それ以上に特徴的なのは、比較的自由度の高い環境だと思います。主体的に行動することが前提の環境だからこそ、自律的に働ける方にはすごく面白い環境だと思います。
また、クライアントとの関係性も特徴的です。一度きりではなく、長くお付き合いするケースが多いんです。その中でクライアントへの理解も深まり、デザイナー自身も成長していく。そうした関係性が、クリエイティブの質を高めている部分もあると思います。
足立さん
デザイナーは、わりと職人気質なメンバーが多いですね。作業中はかなり集中していて静かです。
一方で、当社には「編集思考」という考え方が根付いているため、デザイナーだけでなく、プランナーやコピーライターも交え、それぞれの視点を持ち寄りながら、ざっくばらんにアイデアを出し合う文化があります。
束縛されるような環境はまったくなく、むしろ一人ひとりの自主性が尊重され、自ら考え、行動することが求められる環境だと思います。
「デザイン以外のカルチャー」を持った方も歓迎したい
── どんな方と一緒に働きたいと考えていますか。
足立さん
職人気質なメンバーは、すでに社内にたくさんいます(笑)。だからこそ、それとは違う視点を持った方と一緒に働けたら嬉しいですね。
Web、グラフィック、AI、デジタルなどの専門性もそうですし、何よりデザイン以外にも自分ならではの強みや、一芸がある方に魅力を感じます。
編み物でも、ダンスでも、音楽でも、スポーツでも何でもいいんです。デザイン以外のカルチャーを持っている方のほうが、提案に独自性が出ると思うんですよね。
デザインだけを見続けていると、どうしても似てきてしまう部分があります。だからこそ、外の世界に興味を持っている方や、何かに熱中している方は歓迎したいです。
今井さん
私はもう少し別の観点で、今まで社内にいなかったタイプの人材にも興味があります。
例えば事業会社でWebマーケティングに携わってきた方や、VMD、顧客体験設計など、デザインとは異なる視点や専門性を持つ方です。そうした多様なバックグラウンドが、新しいクリエイティブや事業の可能性を広げてくれると思っています。
今後の10年を考えたときに、同じタイプの人材を増やすよりも、新しい視点や専門性を持った方が加わるほうが、会社としても面白くなっていくと思っています。
会社を、自分の成長の装置にしてほしい
── 最後に、これから入社を考えている方に向けてメッセージをお願いします。
池澤さん
私は入社して10年が経ちましたが、入社当時と比べると、会社の事業領域や仕事内容は大きく変化しました。それに伴って組織も変化し、求められる役割や働き方も少しずつ進化しています。
だからこそ、変化を前向きに楽しみ、自ら成長していける方にとっては、とても面白い環境だと思います。
また、当社では毎年スローガンを掲げ、「デザインを楽しもう」「チャレンジ」「超えてる?」といった言葉を大切にしています。ただ、それを会社から与えられたメッセージとして受け取るだけではなく、「自分ならどう楽しむか」「自分はどうなりたいのか」を主体的に考えられる方とご一緒したいですね。
会社から与えられるものを待つのではなく、自ら意味や面白さを見つけていく。そうした姿勢を持つ方であれば、きっと当社の環境を楽しめると思いますし、私たちもそのような主体性を持った方と一緒に、新しい価値をつくっていきたいと考えています。
高橋さん
デザインという言葉の定義もどんどん広がっています。
これから求められるデザインとは、ビジュアルだけではなく、サービス、体験、コミュニケーション、仕組みづくりまで含めたものになると思います。
だからこそ、いろいろなバックグラウンドを持った方と一緒に、新しいクリエイティブをつくっていきたいですね。
私たち自身も、従来のデザイン会社という枠組みにとらわれることなく、編集思考を軸にしながら進化していきたいと思っています。
編集思考を起点に、デザインの領域を広げ続ける
今回のインタビューを通じて印象的だったのは、ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケートが「デザイン会社」でありながら、デザインを単なるアウトプットとして捉えていないことでした。
雑誌づくりをルーツに持つ編集思考を強みに、情報や人、組織、ブランドに散らばる価値を整理し、新しいストーリーとして社会に提示する。そのために必要であれば、ブランディングにも、ファシリテーションにも、空間づくりにも踏み込んでいく。
一方で、その根底には高いデザイン品質へのこだわりもあります。完成度を追求する職人的な姿勢と、新しい視点を積極的に取り込もうとする柔軟さ。その両方を持ち合わせていることが、同社の大きな特徴なのかもしれません。
これからの10年に向けて、ダイナマイト・ブラザーズ・シンジケートが求めているのは、単に優秀なデザイナーではなく、自分自身の興味や専門性を持ち込みながら、デザインの可能性を広げていける人材です。
「会社を、自分の成長の装置にしてほしい」
その言葉には、クリエイターの成長と会社の成長を重ね合わせながら、新しい価値を生み出していこうとする同社の姿勢が表れていました。
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