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Webサイト制作やリニューアルを進める中で、提案書の作成は欠かせません。しかし、「提案書の作成が苦手」「作成できるが、非常に時間がかかる」と悩むWebプロデューサーも多いのではないでしょうか。
そこで今回はWebプロデューサー向けに、提案書に必要な要素や、わかりやすい提案書の作成方法を紹介します。
提案書の目的は意思決定者が判断可能な状態にすること
提案書は企画内容だけでなく、その企画がもたらすメリット・効果と、発生しうるリスク・コストを記載した書類です。企画内容を伝えるだけの書類は提案書ではなく、単なる情報共有の書類に過ぎません。
メリットとデメリットを比較検討し、提案内容を実行に移すかクライアントの判断材料となるのが提案書です。つまり、良い提案書とは「メリット・効果の方が、リスク・コストを上回るなら実行しよう」と判断を促すものとなります。
提案書に必要な7つの要素
説得力のある提案書を作成するためには、次に挙げる7つの要素が必要です。
・現状と理想の定義
・解決すべき課題の定義
・メリット
・デメリット
・企画や提案が成功する理由
・実績や事例
・提案書自体のデザイン
それぞれ詳しく見ていきましょう。
課題解決につながるロジック
提案書を作成する際に必要なロジックは、次の4つです。
現状と理想の定義
提案書を作成するに至る「課題」を明確にするためには、「そもそも、今どんな状況なのか」そして「どんな状況にしたいか」を知る必要があります。その際に活用できるのが「As Is/To Be分析」です。
As Is/To Be分析とは、「As Is(現在の状態)」と「To Be(理想的な状態)」を客観的に理解し、その間にあるギャップの問題点を分析する手法です。問題点を抽出した後は、優先順位をつけながら実際の行動に落とし込んで解決を目指します。
As Is/To Be分析を有効活用するためにも、Webプロデューサーはクライアントからできる限り情報を引き出し、現状と理想を整理することが大切です。
解決すべき課題の定義
課題とは、現状と理想の間に生じている「ギャップ」です。
例えば、「月の売上が100万円」という現状と、「月の売上が200万円」という理想があったとします。ここでの課題とは「現状と理想のギャップ=100万円の差」となるでしょう。
課題を抽出したのちは、その要因がどこにあるのか分析し、具体的な解決策に繋げていきます。
企画・提案のメリット
提案書では、単に提案内容を記載するだけでなく、「提案を実行したことで得られるメリット」も合わせて提示します。しかし、「売上を上げる」など言語のみで示されたメリットは、達成したかどうかの判断が困難です。
そこで用いられるのが、理想を数値化した「KGI」という考え方になります。KGIは、「Key Goal Indicator」の略であり、企業全体の方向性を定めた、いわゆる「最終目標」です。先の例でいくと、理想として掲げる月の売上が「200万円」という数値が、そのまま達成すべきKGIとなるでしょう。
また、課題の分析により明確になった要因の数値化(KPI)も重要になります。KPIとは、「Key Performance Indicator」の略で、KGIよりも細分化された「業務レベルにおける具体的な目標」です。「KPI」のクリアはすなわち、理想の数値化である「KGI」のクリアを意味します。
例えば、先の例の課題要因が「そもそも、WebサイトへのPV数(訪問者数)が少ない」ところにあったとします。この要因を具体的な数値で表したときに「月のPV数が10万」だった場合、「月のPV数を30万にする」などのKPIを設定できます。
実際には、より詳細な分析やKGI・KPI設定が必要なため、あくまでも概略として覚えておいてください。
企画・提案のデメリット
提案書にはメリットだけでなく、経済的・人的、そして時間的コストも記載します。可能な場合は、企画が失敗したときのマイナス効果も合わせて提示しましょう。そうすることで、クライアントはメリットとデメリットを比較検討し、提案内容を実行するか否かを判断できるようになります。
意思決定の後押しとなる信頼感
提案書にはロジックのほか、次の3つのような信頼感に繋がる要素も大切です。
企画・提案が成功する理由
企画や提案の成功率は、クライアントが最も気になるところです。ただし、提案書を採用してもらいたいからといって、根拠もない数字を言うわけにはいきません。
そのため、「成功率は〇%」と明言するのではなく、PDCAサイクルなどを使って「目標達成に近づけるために、課題の発見と改善を繰り返す」と示す内容を盛り込みます。
目標の達成まで投げ出さずに対応してくれるとわかれば、クライアントからの信頼が得られ、意志決定の後押しとなってくれるでしょう。
実績・事例
豊富な実績数や導入事例などの記載は、信頼感に大きく影響します。さらに可能であれば、課題解決までのプロセスや成果を具体的に紹介しましょう。特にクライアントへ提案する内容に近い事例であれば、より信頼感が増すことになります。
提案書自体のデザイン
提案書のデザインで最も求められるのは、「提案内容の理解を促すこと」です。つまり、美しさではなく、分かりやすさを重視したデザインが大切になります。そのため、1つのスライドには1つの結論を必ず書き、その積み上げでプレゼンテーションの流れを作るようにしましょう。
また、「ページの少なさ=分かりやすさ」ではありません。無駄な部分は省きながらも、理解を促すために必要なページ数はしっかり確保します。
他にも、提案内容(〜すると良い)とその根拠(なぜなら〜)など、ページ間の繋がりを意識したり、詳細なデータや説明などは別紙で添付するなどの配慮も必要です。
提案書の構成【Webプロデューサーの場合】(900字程度)
では実際に提案書を作成する際には、どのような項目を盛り込んでいけば良いのでしょうか。
Webプロデューサーが提案書を作成する場合の構成は、次の8つです。
・目次
・結論
・現状のサイト分析
・課題に対する企画や提案
・実行計画
・メリットとKPI、KGIの整理
・コストやリスクの整理
・まとめ、結論
それぞれ詳しく見ていきましょう。
目次
はじめに、提案書全体を一目で確認できるように目次を挿入します。
目次は概要の理解を促すだけでなく、事前に終わりが分かることで、提案書を読み進める気持ちを損なわせない効果もあります。
結論
提案書では、結論を先に伝えた上で、その理由や詳細を次ページからブレイクダウンしていきます。結論を最初に分かりやすく書くことで、相手に話を聞く姿勢になってもらいやすいからです。
このとき、自分たちが言いたいことだけを羅列するのではなく、「相手が提案書で知りたいこと・求めていること」を念頭に伝えます。具体的には、主に次の3つを結論ページに盛り込んでいきましょう。
・他社との違い
・課題の解決策
・ペイン(不安や不満など)の減少 など
現状のサイト分析
結論ページの後は、「なぜそのような結論に至ったのか」を順番に説明していきます。はじめに記載するのは、「現在のWebサイトでは、どんなところで損をしているのか」をクライアントに示すサイト分析結果です。
ここでは、3C分析やSWOT分析が有効活用できます。3C分析とは、「自社(Company)」「競合(Competitor)」「顧客・市場(Customer)」の3要素から、事業成功に必要な戦略ができているか確認する分析方法です。
特に、サイトのパフォーマンスに直接影響する「顧客・市場(Customer)」についてはより深ぼる必要があります。特に顧客を深ぼることで、顧客のニーズやインサイトについて把握でき、より意味のあるサイト分析を実現できます。
具体的には、ペルソナ分析と言われるような架空の顧客像を元にしたターゲット分析や、カスタマージャーニーと言われる顧客の行動分析などが挙げられます。
顧客や市場の分析はなんとなくイメージでやってしまうこともありますが、実際のユーザ行動や顧客をイメージすることでより正確なインサイトを見つけ出すことができます。
一方、SWOT分析とは、「強み(Strength)」「Weakness(弱み)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」の4要素から、ビジネスの進め方を把握する方法になります。
2つの分析方法は、一見すると同じように見えます。しかし、3C分析は自社の強み、つまり今後伸ばすべき部分を明らかにするのに対し、SWOT分析は強みと弱みの両面を把握し、ピンチやチャンスなど状況に応じた戦略を明らかにする方法です。
それぞれ必要に応じて使い分けることで、説得力のある提案書に一歩近づけられます。
サイト分析による現状整理と課題定義
分析結果から導き出された現状を整理し、抽出した課題を記載します。
課題に対する企画・提案
次に、課題に対する企画や提案について、具体的に記載していきましょう。
実行計画
実行計画では、プロジェクト体制図や概算スケジュールなどを記載します。これにより、どのような体制・流れで進めていくかをクライアントが把握できます。
メリットとKPI・KGI整理
提案を実行することによって得られるメリットやKGIを明確にし、そのために必要なKPIを設定していきます。
コスト・リスク整理
メリットなどの良い面と合わせて、コスト・リスクといったデメリット面もきちんと記載し、クライアントの判断をあおぎましょう。
まとめ・結論
最後に、提案書のまとめや結論を記載します。クライアントからの信頼感をより得られるよう、会社情報や実績なども記載することもおすすめします。
提案書作成時のおすすめの参考サイト
提案書作成に慣れていないWebプロデューサーは、次のようなサイトを参考にしながら作成するのも1つの方法です。
例えば、「alle」では、200以上の提案書を閲覧できます。アイデアやプログラミング、デザインなど、カテゴリ別に探せるため、非常に使いやすいサイトです。
また、「販促会議企画コンペティション」では、熾烈なコンペで勝ち残った、レベルの高い提案書を閲覧できます。さらに、「SlideShare」では日本だけでなく、海外の提案書も閲覧できるため、デザインの参考にもなるでしょう。
提案書はパワポ作成前の構成とロジックが9割
提案書の作成は、Webプロデューサーにとって欠かせない仕事でありながらも、苦手だと感じる方も多いでしょう。しかし、構成とロジックさえ作成できれば、9割方完成したといっても過言ではありません。
提案書の作成が苦手だというWebプロデューサーは、今回紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。