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これから求められるBTC人材とは?デザイン・クリエイティブの分野で必要とされるスキルなどについて解説

目次

これから求められるBTC人材とは?必要とされるスキルなどについて解説

BTC人材が活躍する時代

「BTC人材」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。これは単なる流行語ではなく、いま多くの企業や現場で本質的に求められている人材像を指しています。特にWebやアプリなどのデザイン業界において、このBTC的な視点やスキルを備えたクリエイターが、プロジェクトの中核を担うケースが増えてきました。

この記事では、BTC人材の意味や解説から、現場で必要とされる具体的なスキル、キャリア形成の方法までを解説します。デザイナー、エンジニア、ディレクターなど、現場で日々活躍している方に向けて、これからの時代に求められるクリエイター像を考えるヒントをお届けします。

BTC人材とは?

BTC人材の意味

BTC人材とは、Business(ビジネス)・Technology(テクノロジー)・Creative(クリエイティブ)の3領域すべてに一定の理解や関与ができる人材を指します。それぞれの専門家を繋ぐハブのような存在であり、複数の観点から物事を統合的に捉え、価値を創出する役割を担います。

この概念は特に、スタートアップや新規事業開発の文脈で広く注目されてきましたが、今ではクライアントワークを行うデザイン制作会社やデザインコンサルティング会社を含む、さまざまな新規事業のプロジェクトにおいても重要視されるようになっています。

T型・Π型・複合型人材など他のワードとの違い

T型人材が「専門性+幅広い知識」、Π (パイ) 型人材はその字体で表される様に汎用的な知識と「複数の専門性」を持つことを意味するのに対し、BTC人材は「専門性をまたぐ橋渡しと統合の実行力」に長けています。つまり、自分の専門性だけでなく、他領域の価値や言語を理解し、それらを融合してプロジェクトを前に進めることができるのが特徴です。

制作や開発現場においては、各職種が縦割りされやすい中、BTC的な視点を持つ人がいることで、事業会社においては部門間の連携がスムーズになり、チーム全体の意思決定や実行が加速されるというメリットがあります。クライアントを行う制作会社においても、クライアントの各部門とのコミュニケーションがスムーズになり、より良い提案を行うことができるでしょう。

BTC人材の必要性がどうして高まっているか

プロジェクトが複雑化し、変化のスピードが速まる現代において、単一スキルでは対応しきれない問題が増えています。VUCA (ブーカ) という言葉で表現される様な変化が激しく先を見通すことが難しくなる時代に現代は突入しています。
そのため新しいサービスやアプリを生み出すには、ビジネス要件とユーザー体験、そして実現可能な技術の3軸すべてを同時に考える必要があります。

このような状況では、職種を超えて会話ができるBTC人材がプロジェクトの「要」となります。例えば、ビジネス側が意図する価値と、エンジニアが実現できる範囲、そしてユーザーが求める体験の落としどころを見極め、スピーディに仕様を決定していく役割が求められます。

デザイン・クリエイティブ業界におけるBTC人材

なぜデザイン職にビジネス・テクノロジーの理解が必要か

かつてデザイナーの役割は「見た目を整えること」に限定されがちでした。デザインの役割も広告を中心としたコミュニケーションのためであることがほとんどでした。そういった時代では、コーポレートサイト、ブランドサイトなど静的で情報理解のためのWebサイトが主流でした。
しかし現代では、Webサービスやスマートフォンアプリなど、機能を活用して操作する動的なWebサイトやアプリの役割が急速に広がっています。そのため、デザイナーがプロダクトのビジョンやコンバージョンなどの成果、技術的制約を理解しながら、最終的なアウトプットの方向性を定める役割も担っています。

デザイナーにもビジネス的な視点があれば、売上やユーザー獲得という目標に対して、どのようなUI/UXが適切かを判断できます。またテクノロジーなどの理解があれば、技術的に無理のない実装可能なデザインを提案することができ、開発との摩擦も減らせます。

こうした能力は、単に「チームメンバーとコミュニケーションできる」というためではなく、「複数の要素を咀嚼してより高いレベルを実現する」ために不可欠なスキルです。

BTC視点を持つことでできること

意思決定のスピードと精度が上がる

複数の視点を同時に扱えることで、仕様の決定や改善の判断が早くなります。たとえば、UIの調整に際し、ビジネス的なKPIへの影響・技術工数・ユーザビリティを同時に考慮することで、より精度の高い意思決定が可能になるでしょう。

企画〜実装まで一貫して関われる

BTC人材はプロジェクト初期の企画や構想段階から関与することができ、PoC、MVP、グロースといった各フェーズで能力を発揮することができます。この一貫性が芯の強いプロダクト開発に役立つことでしょう。

職種の壁を越えたコミュニケーションが可能

デザイナーやエンジニアなどの職種間での橋渡しとして機能することで、コミュニケーションのミスを防ぎ、チームで取り組む質を高めます。たとえばエンジニアにとって理解しづらいデザイン細部の意図を、必要な要件として伝えることができるでしょう。

BTC人材がどの様に活躍できるか?

ディレクターが技術要件を理解し、コスト、スケジュール面での効率化を考慮

例えば予算やスケジュールが限られていたECサイト構築プロジェクトがあったとして、ディレクターがSaaS、オープンソースを使った仕組み、スクラッチで開発をする場合に必要となる工数の目安をそれぞれ理解していたことで、求められる要件から最適な実装方法を選択できる可能性があります。その結果、予算面やスケジュール面から効率の良い方法を選択でき満足度の高いプロジェクトになることがあるでしょう。

デザイナーがCV率を向上させるためにビジネス要件からUXを再設計

離脱率が高かったサービスサイトがあったとして、デザイナーがユーザーの行動データからインサイトを見つけ、全体のUX/UIを再設計。不必要な動線の削除、適切な文言を配置するUXライティング、コンポーネントの再配置などを行い、KPIに直結する成果を上げる可能性があります。

エンジニアがUXを考慮し、クリエイティブ視点でUIを実装

デザイナーが作成したプロダクトのデザインに対し、エンジニアからより魅力的に表現できるアニメーションや操作性の高いUIの提案が行われれば、操作感やブランド表現が向上するでしょう。またデザインの意図をしっかりと汲み取ることができれば、プロジェクト途中の行き戻し抑えることもできます。エンジニアが広い視点を持つことで、開発の効率性とデザイン性の両立が実現できることでしょう。

BTC人材に求められる具体的なスキルセット

Business(ビジネス)領域の理解

それではBusiness(ビジネス)領域について、より理解を深めスキルを身につけるためにはどういったことが有効なのでしょうか。いくつか例を挙げてみたいと思います。

KPI設計・ビジネスモデルの読解力

デザインや開発を行うWebサイトやアプリなどのデジタルプロダクトが追うべきゴールを定量的に捉え、UI/UXや実装仕様に落とし込む能力。たとえば「離脱率を下げてコンバージョンを伸ばす」といった目標に対し、導線や機能を強化するかを設計する力が求められます。

デジタルマーケティングやデータ分析の基礎知識

Google Analyticsやヒートマップ、ユーザーインタビューの分析結果から、定量・定性の両面で仮説を立てる能力。これにより「ユーザーが離脱する原因はどこか」「改善すべき導線は何か」などが読み取れます。

プロジェクトマネジメントの実践力

WBS(作業分解構造)やガントチャートを活用した進行管理、タスクの優先順位づけ、リスクヘッジといったマネジメントスキルも重要です。

Technology(テクノロジー)領域の理解

プログラミング・コーディングやサーバなどTechnology(テクノロジー)領域は専門的であり、理解には労力も必要ですが、Technology(テクノロジー)領域を把握できることで得られるメリットは大きいものであります。

基本的なコーディングや開発の知識

HTML/CSS/JSの基本構造やGitによるバージョン管理、API連携の仕組みなどを理解していると、開発メンバーとのやりとりが格段にスムーズになります。

ドメインやサーバなどのインフラに関わる基本的な知識

クライアントが現在稼働させている環境をそのままにしながら、どの様に新しい開発環境を構築してプロジェクトを進められるか、また本番公開に必要な手順などを考慮できる力があると良いでしょう。

ノーコード/ローコードツールを活用した経験

近年は業務効率化に効果的なノーコードツールやローコードツールが多く登場してきています。Googleが発表したStitch、Webflow、Notion、Replitなどのノーコードツールを活用できることもスキル向上のために有効です。

Creative(クリエイティブ)領域の専門性

デザインなどに関するCreative(クリエイティブ)領域についても専門性を高めることで、優れたスキルを総合的に伸ばしていくことができるでしょう。

ユーザビリティやUIの考え方

Webサービスやアプリなどのデジタルプロダクトをより良いものにするために、ユーザビリティ(使いやすさ)とUI(ユーザーインターフェース)の考え方は非重要です。いかに見た目が洗練されていても、操作に迷いやストレスがあればユーザーはすぐに離脱してしまいます。BTC人材としてクリエイティブ領域を担う際には、「見た目の美しさ」だけでなく、「使いやすさ」と「意図の明確さ」にも配慮する視点が求められます。

UI要素の配置が直感的でない場合、ユーザーは次のアクションに戸惑い、結果的にコンバージョンが下がることもあります。UIやユーザビリティの知識は、ユーザーテストやABテストなどの検証結果をもとに継続的にアップデートすることも欠かせません。BTC人材としては、これらの視点をプロダクト全体の設計や意思決定に反映し、開発・ビジネス側とも連携しながら質の高い体験を構築していく姿勢が求められます。

アートディレクション

優れたUIを実現するためのコンポーネント設計やアトミックデザインなどの概念を理解しておきましょう。またビジュアルデザインの面では、デザイントーンの考え方、デザイナーへのデザイン指示、デザインコンセプト作成などもマスターできると良いでしょう。

ユーザーリサーチとプロトタイプ

実際に作成したデザインは多くのユーザーにとって使いやすいものであるかを検証することが大切です。そのためにはユーザーインタビューなどの定性調査やABテストなどの定量調査を行なって検証をしていきましょう。検証のうえでは、カスタマージャーニーマップ作成、Figmaなどを用いたプロトタイプを作成するスキルが必要になるでしょう。

実務を通じてツールを習熟しよう

デザインツールは操作できることが全てではありませんが、Figma、Adobe XDなどのデザイン/プロトタイピングツールを実践レベルで使いこなせると、ワイヤーフレームの作成やブラッシュアップ、他のメンバーとの連携にも役立つでしょう。

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BTC型を目指すためのキャリア形成とどの様に学習するか

一足飛びではなく、軸を持ったステップアップ

BTC人材とは、なんでも屋になることが目的ではありません。まずは自分の専門性をベースにしながら、隣接領域へと視野を広げていくことがBTC型への現実的なステップです。たとえばデザイナーが分析ツールを触ってみる、エンジニアがUIデザインの意図を汲み取ってみるなど、小さなことから始めましょう。

現場でできる実践的なアプローチ

隣接領域に「一歩踏み込む」仕事の選び方

たとえばエンジニアがコーディングの時に必要なプロパティの確認のためだけにFigmaを触るだけでなく、ひとつひとつのコンポーネントがどの様な要素で構成されており、どうしてその様なデザインになっているかの意図を汲み取って考えるクセをつけてみることも有効です。

チームメンバーとの日常的な会話にもヒントが

チームメンバーとの日常的な会話ベースでも、「なぜその仕様にしたのか」「どう実装されるのか」などを聞いてみることが重要です。対面での会話でも、Slackなどのチャットや定例会の中で、気になったことはどんどん質問してみましょう。

社外活動からインプットが得られることも

普段はデザインを行わない人が趣味でデザインを作成してみたり、自主的にオンラインショップを運営するなど、普段の仕事とは離れたところで広い視点を身につけることができる機会があります。また近年では、副業やハッカソン、スタートアップ支援、オンラインコミュニティでのプロジェクト参加など、日常業務外の文脈でBTC型スキルを発揮する機会を得ることもできるでしょう。

これからのクリエイターにBTC思考がもたらす可能性

変化に強いキャリアを築ける

専門職としてのアイデンティティを持ちつつ、複数領域にまたがる視点を持つことで、職種の枠に縛られずにキャリアの幅を広げられます。変化の速い時代だからこそ、横断的な視点が「職種から自由になる力」につながります。

プロジェクト全体を推進できる立場に立てる

BTC人材は、プロジェクトを構想から実現、改善に至るまでリードできる存在です。意思決定や仕様策定に深く関与することで、単なる実務者から「プロダクトの共同創作者」へと立場が変わります。

おわりに

BTC人材を目指すことは、単なるスキル習得ではなく、クリエイターとしての視野と可能性を広げることでもあります。「全部できる人になる」ことをゴールにする必要はありません。大切なのは、自分の専門性を核にしながら、周辺領域に目を向ける柔軟さと学び続ける姿勢です。