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ペルソナの起源
ソフトウェア設計者であるアラン・クーパーは2000年に「コンピュータは、むずかしすぎて使えない」という本を著しました。このタイトルに書かれている問題点に対する提言として、アラン・クーパーが提唱した「ペルソナ」。現在のUXデザインやマーケティングにおいては欠かせない手法となっています。本記事では、ペルソナの定義や作成方法、活用方法、注意点について解説します。
ペルソナとは何か?
ペルソナとは、ある製品やサービスのターゲットユーザーを想定した「架空の人物像」のことを指します。具体的には、年齢や性別、職業、趣味などの属性情報だけでなく、ライフスタイルや価値観、課題やニーズなども含めたイメージを作り出します。
ペルソナを用いることで得られるメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- ターゲットユーザーのニーズや行動パターンを深く理解できる。
- デザインやコンテンツの制作において、ユーザー目線で考えることができる。
- プロダクトやサービスの開発や改善に役立つ情報が得られる。
- チーム内のコミュニケーションを円滑にすることができる。
アラン・クーパーが提唱したペルソナ
ペルソナの提唱者であるアラン・クーパーは、「コンピュータは、むずかしすぎて使えない」という問題点を指摘しました。当時のパソコンは、専門知識が必要な複雑な操作や、エラーメッセージのわかりにくさなど、一般の人々にとって利用しづらいものでした。
クーパーは、この問題を解決するために「ペルソナ」という手法を提唱しました。ペルソナを用いることで、一般の人々が使いやすいコンピュータを作り出すことができると考えたのです。漠然と使いやすくするためにはどうすべきかを考えるのではなく、メインターゲットとなる特定の人物を設定することによって、その人物のリテラシー、考え方、傾向などを良く理解することができ、コンピューターの改善に役立てるという発想です。
ペルソナの作成方法
ペルソナを作成するためには、メインとなる顧客像を具体的に作り込んでいく必要があります。すでに存在している顧客から具体的なイメージを掘り下げていくこともあります。一方でこれまでの概念に捉われず、新たにペルソナを設定する場合は、ユーザーインタビューなどによって具体的なペルソナ像を詰めていくことも必要になるでしょう。
また具体的なペルソナ像を作成するためには、以下のような情報を設定する必要があります。
- ターゲットユーザーのデモグラフィック情報・属性情報(年齢、性別、職業、居住地など)
- ターゲットユーザーのライフスタイルや趣味、価値観など
- ターゲットユーザーの課題やニーズ、期待するサービスや製品に対する要望など
ペルソナ設計の具体例
これらの情報をもとに、ペルソナを作成します。ペルソナの具体例を挙げてみましょう。ここではBtoCのサービス提供を念頭に、個人の価値観などを重点的にピックアップしていきます。
- 名前:山田太郎
- 年齢:29歳
- 居住地:東京都杉並区 (東京都西東京市出身)
- 学歴:4年制大学卒業 (経済学部)
- 職業:新卒入社の中堅メーカーの会社員(営業部門)、残業月25時間程度、通勤時間45分、国内出張あり、英語のドキュメントを扱う業務あり、土日休み
- ライフスタイル:独身、賃貸マンションに一人暮らし、毎日出社
- 同居家族:なし、恋人あり
- 趣味:海外リーグのサッカー観戦 (DAZNを契約)、フットサル、YouTube、年に1回の海外旅行、週1回程度の飲み会 (学生時代の友人と)、時々のビジネス本読書
- 年収:480万円
- インターネットリテラシー:高め、わからないことは自分で調べて解決できる
- SNS:Twitter、Instagram、Facebookのアカウントはあるが主に見るだけ
- 価値観:中程度に社交的、健康を意識する様になってきた、タイムパフォーマンスを重視、効率の良いことが好き
- 課題・ニーズ:運動不足解消のためにスポーツジムに通いたいが時間がない、海外旅行のためや仕事でも使う機会があるため英会話もやりたい
- 喜びを感じるポイント:回りくどい表現ではなく、知りたいことがすぐに把握・理解できること
このようなペルソナを作成することで、ある特定のターゲットユーザーをイメージしやすくなります。
ペルソナ設計をする際のポイント
ペルソナを設定する際の項目についてはプロジェクトによって都度検討します。デモグラフィック情報・属性情報、ライフスタイルや趣味、価値観、課題やニーズは多くのプロジェクトで活用される項目です。重要なことは、あまり多くの不要な項目を設定してもノイズになってしまうため、ペルソナ設計後のUX設計や全体のコンセプトに合致する項目・情報を厳選して記載することです。
UXデザインのためのペルソナの活用方法
ペルソナをベースにして、デザインやコンテンツを制作する際には、ターゲットユーザーが求める情報を的確に訴求することが大切です。例えば、先に挙げた山田太郎のペルソナの場合、スポーツジムのサイトに訪れた際には、どのような情報が欲しいと思うでしょうか。
「ストレス解消のためにスポーツジムに通いたいが、時間がない」という課題を抱える山田太郎にとって、ジムの営業時間やレッスン内容、キャンペーン情報などがわかりやすく提示されていることが求められます。特に、山田太郎が忙しい会社員であることを考慮すると、ジムの営業時間がどのように設定されているかが重要となります。
また、山田太郎は趣味として海外旅行に行くことがあります。英会話のニーズを持っているため、英会話教室のサイトに訪れた際には、どのような情報が欲しいと思うでしょうか。
山田太郎は英会話を身につけるために、初心者向けのカリキュラムやネイティブ講師とのマンツーマンレッスンなど、具体的な学び方を知りたいと思うでしょう。また、海外旅行前に学ぶ必要があるため、短期間で効果的に学べるプログラムやスケジュールの提供も求めることができます。
こうした情報を、ペルソナに合わせたデザイントーンで訴求することが重要です。山田太郎のペルソナの場合、シンプルで分かりやすいデザインが好まれることが予想されます。また、情報量が多すぎると、忙しい会社員である山田太郎にとってはストレスとなり、サイトから離脱してしまう可能性があります。
このように、ペルソナに合わせたデザインや情報設計を行うことで、ユーザーが求める情報を的確に伝えることができます。ペルソナをベースにした情報設計のポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
- ペルソナが抱える課題やニーズに合わせた情報を訴求する。
- 情報がわかりやすく、目的に合わせたカテゴリ分けを行う。
- デザイントーンをペルソナに合わせたものにする。
ペルソナに合わせた情報設計を行うことで、ユーザーが求める情報を見つけやすくなり、利用者がサイトやアプリを使い続けることにつながります。
ペルソナ作成についてのまとめ
本記事では、アラン・クーパーが提唱した「ペルソナ」について、UXデザインにおける重要性や活用方法について解説しました。ペルソナを使って、製品やサービスをユーザー目線で開発することができます。ペルソナを作成する際には、客観的なデータや調査結果をもとに作成することが重要であること、また、ペルソナをベースにした情報設計やデザインを行うことで、ユーザーが求める情報を的確に伝えることができることをお伝えしました。