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Webディレクター・プロデューサーのための提案書作成に必要なスキル解説

提案書は、新規プロジェクトの発注先を決める複数社によるコンペを勝ち抜くため、またプロジェクトのキックオフ・発案・進行において欠かせない資料です。Webプロデューサーはもちろん、Webディレクターが作成するケースも多々あります。

しかし、「提案書を作るのは苦手」「クライアントに響く提案書をなかなか作れない」と悩むWebディレクターも少なくありません。

そこで今回はWebディレクターの提案書について、採用率を上げるコツやテクニックを紹介します。

提案書と企画書の違い

提案書と似たような書類に、企画書があります。効果的な提案書を作るためには、まずこの2つの違いを把握することが大切です。違いについては諸説ありますが、それぞれの違いは、次のようになっています。

提案書は発注前に作成する資料

提案書は、クライアントの課題を解決するアイデアやプランを提案する書類です。提案内容やメリットだけでなく、コストや場合によってはリスクも示します。つまり、提案書は発注前に作成し、クライアントに発注の可否を判断してもらう資料なのです。

新規案件は複数のデザイン会社がコンペ形式で提案を行い、最も内容が優れていたり、費用対効果が高いと思われる会社に発注されることが多いです。デザイン会社は新規案件を獲得するために、このコンペを勝ち抜くことが求められます。

企画書は発注後に作成する具体的な計画

企画書は、提案書の内容を実務レベルまで細かく検討・提示する書類です。つまり、発注後に作成する具体的な計画書となります。

例えば、印象的なビジュアルを作成するための撮影やレタッチのアイデア、プロモーション企画のための動画コンテンツの撮影や編集などのアイデア、SNSを使ったPR施策など、プロジェクトを具体的に推進するための詳細な戦術について提案をすることが多いです。

とはいえ、場合によっては受注確率を上げるために、提案書へ企画書の内容を含めるケースも珍しくありません。とくに、新規のクライアントであれば、提案書と企画書を兼ねた書類を提示することで、相手の信頼と発注確約を得られやすいメリットがあります。

採用される提案書に共通する説明の流れ

提案書は、発注の可否に関する判断がゆだねられる書類です。クライアントに提案書が採用されなければ、Webディレクターは仕事を始められないばかりか、報酬を得られません。

採用される提案書には、次のような6つの共通点があります。受注確率を上げたいWebディレクターは、ひとつずつチェックしていきましょう。

導入 – 提案する自社の強みや特長を伝える

提案日の前には顔合わせや説明会、オリエンテーションなどが設定され、そこで自社を紹介する機会を得られます。しかし、いざ提案日になると、クライアントの中で自社の印象が薄れていたり、提案当日に初めて出席する人がいる可能性も低くありません。

クライアントに再度自社を印象付けるためには、冒頭の導入で自社の強みや特徴を改めて伝えることが大切です。すると、クライアントは「耳を傾ける価値のある提案だ」と、腰を据えて提案を聞く姿勢に入ってくれるでしょう。

与件を整理する

説明会やオリエンテーションの際には、クライアントから「このような点を解決したい」というリクエストをもらいます。このリクエストを「与件」といいます。

提案時には改めて与件を整理し、提案書が何について語っているのかを明確に伝えることが大切です。そうすることで、プロジェクトに対する共通認識を持って話を進められます。

このタイミングで予見を整理しないと、提案がそもそもどこに向かっているのかが曖昧になるため、見落としがちなステップですが、しっかりと定義しましょう。

現状を分析する

課題に対する解決策を提案する際には、その根拠となるデータが必要です。このとき、現状のWebサイトについて分析したデータを提示するとよいでしょう。とくに、3C分析とSWOT分析は、Webサイトの現状分析に有効です。

3C分析とは次に挙げる3要素について、プロジェクトの成功に必要な戦略が実行できているか分析します。

・自社(Company)
・競合(Competitor)
・顧客・市場(Customer)

特に、顧客・市場(Customer)はWebサイトのパフォーマンスに直接影響します。そのため、顧客のニーズやインサイトの把握が非常に大切です。

一方、SWOT分析とは次に挙げる4要素について分析し、プロジェクトの進め方を検討する方法です。
・強み(Strength)
・Weakness(弱み)
・機会(Opportunity)
・脅威(Threat)
一見すると、2つの分析は似ています。しかし、3C分析は自社の強みと弱みなどを再確認しながら、顧客のインサイトを見つけたり、競合やベンチマークの良い点を取り入れたりする上で有効です。

そして、SWOT分析は3C分析の自社について再確認しつつ、弱みを補い、強みを生かして他社との差別化を図る上で有効となります。また弱みだと思っていたことも、視点を変えると強みになることがあります。

提案書の作成時には、それぞれの分析を目的にあわせて使い分けたり、併用したりするとよいでしょう。

課題を明確にする

分析した結果を踏まえて課題を抽出し、それを解決することが本提案の意義であると説明します。ウェブサイトのリニューアルの場合は、課題をさらに分類することも有効です。

例えば、デザイン面での課題、UIの面での課題、コンテンツ面での課題、機能面での課題、運用面での課題、プロモーション面での課題、など価値連鎖 (バリューチェーン) を意識して上流から下流までのそれぞれのステップに分解することで、やるべきことが見えてくるでしょう。

与件整理ではまだ漠然としていた課題が明確になることで、クライアントは具体的な解決策を知りたがるでしょう。そこで次の戦略やコンセプト提示につなげます。

課題解決の戦略やコンセプトを提示する

明確となった課題に対する解決策として、どのような戦略やコンセプト設定が必要か提示します。コンセプトの文量は人によって長かったり短かったりすることがあるかと思いますが、基本的にはしっかり覚えられる様なシンプルなものがいいでしょう。

例えば、
・「家庭でもなく職場でもない第3の空間」(スターバックス)
・「新しい本に出会える体験型の本屋」
・「デザインで問題を解決するコンサルティング」
・「新しいコミュニケーションが生まれるラウンジ」
など、ベネフィットや内容を簡潔に指し示すことができる内容が良いでしょう。またここでのコンセプトは、タグラインやキャッチコピーではないため、言い回しも捻ることなく的確に伝えることを意識しましょう。

戦略やコンセプトを体現する、デザインやコンテンツ案を様々な角度から提案する

実務戦略やコンセプトを実現するためにはどうしたらよいか、具体的なアイデアを提案します。

たとえば、会社の新卒採用サイトを制作する際、バイタリティ溢れる雰囲気を演出したい場合は次のような手法が考えられるでしょう。

・挑戦心を刺激するキャッチコピーをトップページに掲げる
・ダイナミックな印象を与える動画をトップページに配置する
・仕事に対する各社員の意識を深堀りした「社員インタビュー」を掲載する
・「数字で見る働き方」などの特別ページで会社の成長力を示す
・芯の強いフォントでタイポグラフィが印象的なデザイントーンにする
・背景やボタンなどにおける色のコントラストを高める

ここまで具体性のある提案であれば、クライアントも完成形をイメージでき、発注確約も得られやすくなります。

提案書をより魅力的に表現するテクニック

採用される提案書には、クライアントを惹きつける情報やアイデアが盛り込まれているとわかりました。とはいえ、単にそれらを羅列するだけでは、提案書の採用確率は上がりません。

そこで、Webディレクターの提案書をより魅力的に表現するテクニックを5つ紹介します。

実績や事例を示す

クオリティの高い過去実績の提示は、クライアントからの信頼感を高められます。とくに説得力があるのは、同業他社での解決事例です。「同業での実績があるなら、自分たちのプロジェクトも任せられる」と安心感を抱きやすくなります。

また、異業種企業での事例も、今回の提案にどのように活かせるか、ケーススタディとして紹介するのもおすすめです。

資料のレイアウトを工夫する

提案書は、クライアントへいかにわかりやすく提案を伝えられるかが鍵になります。そのため、スライドは「1ページに1つの結論を簡潔な言葉で書く」ことを意識しましょう。

基本的に、スライドの各部分には次のような内容を記載します。

上部:当該スライドのテーマ
中部:考察や分析、アイデアなど
下部:当該スライドの結論

スライド1枚ごとに理論を完結させ、それを複数枚続けていくことで、ストーリー性のある魅力的な提案が可能です。

結論を先に示す

各スライドの下部には、当該ページの結論を記載すると紹介しました。加えて大切なのが、提案書のはじめに最終的な結論を記載することです。

結論を先に示すことで、クライアントの興味をより惹きつけられます。初手でグッと引きこむことで、その後の詳細な説明も真剣に聞いてくれるでしょう。

定石やセオリーを適宜引用する

良い提案書に仕上げるためには提案内容の説得力を高める必要があります。説得力を高めるためには主観的な主張だけではなく、ある程度の客観性を持つ理論展開が必要となるでしょう。そういった際に役立つのが、定石やセオリーなどと呼ばれる、広く認知されている戦略理論です。Webディレクターの提案書には、次のような定石やセオリーを適宜引用してみてください。

・マーケティング戦略の理論
・フレームワーク
・自社で培ったノウハウを一般化した理論
など

これらから得られる考察を盛り込むと、より説得力のある提案書に仕上げられます。

ちょっとしたサプライズを提案する

本来、提案書はクライアントのリクエストに応えられる内容であれば問題ありません。しかし、採用率アップという点を考えると、それだけでは不十分です。

提案書の採用率をアップさせたいWebディレクターは、クライアントの期待を上回るプラスアルファの提案をしていきましょう。

たとえば、次のような制作周辺のアイデアは、提案の付加価値を大いに高めてくれます。

・会社の雰囲気をよりダイナミックに伝えるドローン撮影の動画
・制作したWebサイトと親和性の高い広告手法
・SNSを活用したプロモーション施策
など

Webディレクターの提案書で参考になるサイト

提案書の作成で参考になるのは、書籍だけではありません。実際の提案書から学べることもたくさんあります。

たとえば、次に挙げるサイトでは、レベルの高い提案書の閲覧が可能です。

・alle
・SlideShare
・販促会議企画コンペティション

提案書作りが苦手なWebディレクターは、ぜひ一度チェックしてみてはいかがでしょうか。

Webディレクターの提案書は作成前の準備が肝心

Webディレクターの提案書は、分析や課題の抽出など作成前の準備が何よりも大切です。また、作成時にはクライアントに内容がきちんと伝わるよう、わかりやすい構成やデザインが必要になります。

案件の受注率を上げたいWebディレクターは、説得力のある提案書を作成していきましょう。

提案書スキルをアピールするならポートフォリオを

Webディレクターの就職・転職活動には、自身の実績を記したポートフォリオの提出が必須です。提案書スキルもあわせてアピールできると、即戦力として採用されやすくなるでしょう。

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