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日本のデザイナーの年収・給料は、海外デザイナーと比べて半分程度に低いというデータがあります。
同じような仕事をしているはずなのに、なぜ日本のデザイナーの年収・給料は低いのでしょうか?
本記事では、いくつかの調査データを引用しながら世界のデザイナーの年収・給料事情やグローバルで活躍できるデザイナーの条件、日本のデザイナーの年収・給料が低い理由、年収・給料をアップさせていくための方法などについて詳しく紹介します。主にWebデザイナー、UIデザイナー、UXデザイナー、グラフィックデザイナー、モーションデザイナーなどの職種を対象に、それぞれのデザイナーの年収の違いや傾向、年収アップの方法などを考えてみたいと思います。
世界と日本のデザイナーの年収・給料事情
まずは世界のデザイナーの年収・給料事情についてみていきましょう。
年収中央値から見る海外Webデザイナーの実態
少し以前のデータになりますが、アメリカのIT関連のメディアである O’Reilly (オライリー) が世界のデザイナーの年収を調査したレポートを発表しました。その「2016 Design Salary and Tools Survey」 で調査された内容によると、世界のデザイナーの年収額は以下の通りです。
- ✅世界のデザイナー年収中央値は$91,000
- ✅アメリカのデザイナー年収中央値は$99,000
- ✅10年以上経験のあるデザイナーの年収中央値は$114,000
日本のWebデザイナーの平均年収は?
これと比べて、データが中央値でなく平均値ではありますが、求人ボックスの調査によると日本のWebデザイナーの平均年収は男女合わせて約459万円です。
日本のWebデザイナーの平均年収は調査によって多少異なります。DODAの調査によると2021年の時点では、356万円です。(dodaエージェントサービスに登録した20歳から65歳までの人の平均年収データ)
もう一点データを引用します。職業情報提供サイト(日本版O-NET)のjob tagのウェブサイトに掲載されているデータによると、Webデザイナーの平均年収は478.6万円です (独立行政法人労働政策研究・研修機構の研究開発成果物である「職業情報データベース」の情報から作成)。他調査よりやや高い数値ですが、おおよその平均が掴めてくるかと思います。
調査やデータによって多少異なりますが、国内にいたまま、日本の企業や同じ年代の年収と比較してしまうと、自分の給料が低いことに気が付きにくいですが、世界と比較すると日本のデザイナーの年収はかなり低いと言えます。昨今の円安の為替レートを加味したとしても、その差はかなり大きいでしょう。
また、働き方に関しても海外のデザイナーは労働時間も短く、休暇も多い傾向にあります。そのため、同じ様な仕事をしていても日本で勤務するよりも、海外勤務の方が年収や条件が良いことが多いです。
評価されるデザイナーの条件とは?
様々な環境で活躍でき評価されるデザイナーには様々な条件が満たされている必要があり、全ての人がそれを実現できるわけではありません。
例えば、一般的に広告・ポスターなどの印刷物を制作するグラフィックデザイナーの価値は相対的に下がっており、デジタル分野のデザインができないデザイナーは、仕事の規模が今後縮小していく可能性が高いと言われています。距離という障壁をなくし、グローバルに活躍するためには、Webやアプリといったデジタル分野の専門性が必須でしょう。
デザイナーがその専門知識やスキルをさらに高め、その価値を発揮するためにはこれまでの仕事内容やスキルに加えて以下を持ち合わせていることが理想でしょう。
- ✅ Webやアプリなどのデジタル分野に精通している
- ✅ クライアントの状況を理解できるビジネスリテラシーが高い
- ✅ 英語をはじめとした語学がビジネスレベルに達している
- ✅ ビジネスコミュニケーション能力が高い
- ✅ プレゼンテーション能力を持ち合わせている
- ✅ デザインリサーチ、UXデザイン、システム開発など周辺分野の知識も持ち合わせている
- ✅ 自己発信をする力がある
- ✅ 仕事が依頼される環境を見つけることができる (就職、フリーランスなど)
- ✅ わからないことをすぐに調べて身につける力がある
- ✅ 学習意欲が高い・向上心がある
国内で仕事をしているデザイナーの年収・給料が低い理由
前述のO’Reilly 発表の「THE 2017 O’REILLY DESIGN SALARY SURVEY」のデータを参考にすると、日本のデザイナーの給料は世界と比較すると低いことがわかります。それはどうしてなのでしょうか。
ここからは、日本のデザイナーの給料が低いと考えられる8つの理由を考察していきたいと思います。
- ✅社内にデザイン部署がない企業が多い
- ✅デザインの重要性を意識している経営者・企業幹部が少ない
- ✅デザインが過剰に安売りされることがある
- ✅デザイン会社の経営手腕に待遇が左右される
- ✅デザイン教育が一般化されていない
- ✅デザイナーの転職の流動性が低い
- ✅クライアントも良いデザインを見極められないことがある
- ✅一部では多重下請け構造が続く
それでは、一つずつ見ていきましょう。
社内にデザイン部署がない企業が多い
企業によっては社内デザイン部署が存在していなかったり、デザイン作業を他の業務と一緒に行っているケースもあります。
こうなると、デザイナーが新規サービス開発や、会社の経営の根幹に関わることは難しく、結果的に給料が低くなってしまいます。
その一方で海外では、洗練されたデザインによって新規サービスを成功させる会社が数多く存在しており、そういった企業は社内に強いデザインチームを有しています。
デザインの重要性を意識している経営者・企業幹部が少ない
意識は少しずつ高まりつつありますが、まだ十分ではありません。
一方で、高いUI/UXを実現できているオンラインサービスは高い価値を生み出しています。特に海外企業では早くからデザインの重要性を意識し、優秀なデザイナーを雇用してサービスを開発することで企業価値を高めてきました。
日本企業では「デザイナー」は単純な見た目だけをキレイにする人という誤解がまだあることから、付加価値を見出されずに給料が低いと考えられるでしょう。
デザインが過剰に安売りされることがある
日本では、デザインというサービスをあまりにも安く提供しているデザイナーが多すぎて、自分で自分の首を締めてしまっている現状があります。
発注をもらいたいがために価格競争が激しい場面では、安すぎる制作会社や無料でサービスを提供するフリーランスデザイナーなどが、その仕事のやり方によってデザイナー職の地位を下げてしまうことがあります。
またここ数年で増加しているクラウドソーシングなどのプラットフォームも、過剰な相見積もりや競争原理によって、安売りに拍車をかける一因と思われます。売り手だけでなく、発注側も良いデザインには適切な費用が必要だと意識をする必要があります。
デザインを安売りする理由はさまざまですが、自分たちに正当な価値を理解していない人が多いため、このような現状を招いているのだと考えられます。
デザイン会社の経営手腕に待遇が左右される
デザイン会社の経営者はデザイナー出身の方が多いです。デザイン面においては素晴らしいスキルを持っている方も多い一方で、マネジメントや経営にも精通した方となると数が絞られてきます。
会社として自社のデザインサービスに付加価値をつけ、クライアントにその価値を説得するためには、デザインとは別の高度な経営手腕が要求されます。
その経営手腕やスキルによっては、その会社で働くデザイナーの価値がどの様に発揮されるか、また評価されるかが左右されることがあるでしょう。
デザイン教育が一般化されていない
日本ではまだデザインに関する適切な教育を受けられる環境が少ないのが現状です。
もちろん、美大やデザインスクールに通えば専門的な手法を学ぶことができますが、それ以外はどこで、どのように学べばいいか分からずにいる人は多いです。
日本の義務教育などの学校教育ではデザインを作るための発想や手法を学ぶことはなく、興味がある人が自ら学ぶケースがほとんどです。
そのため、多くのビジネスパーソンにとって、デザインとは未知の領域であり、いわば特殊な能力の様に感じるため、その本来の目的や意義を深く理解する機会が少ないことがあるでしょう。
デザイナーの転職の流動性が低い
これはデザイナーに限った話ではないですが、日本では終身雇用という概念が長く定着しているため、同じ会社に長く勤め続けることが美徳であると考えられています。ただ待遇の向上は会社の事情に左右されることが多く、どれだけ頑張っても待遇が変わらないこともあります。
本来、優秀な人材は年齢や勤続年数に関係なく、新しい職種やこれまでと違った分野でのデザインなどへとキャリアアップができるはずです。
日本ではこの感覚がまだ低く、転職の流動性が低いため待遇向上の競争原理が働きにくく、結果的に給料が安いままであることが考えられるでしょう。
クライアントも良いデザインを見極められないことがある
実際のデザインが関わるプロジェクトの現場では、デザイナーをはじめとした制作チームメンバーは、深いディスカッションを重ね、細部までこだわったUIやデザインを制作しています。
一方で、全てのデザインパーツに意味を持たせるところまで吟味されたデザインを、クライアント企業は正しく評価できない場合があります。デザインに精通したスタッフが社内に存在しなかったり、意図を正しく汲み取れない場合もあります。場合によっては、その時の思いつきや印象でそれを評価してしまうこともあります。
こういったことがあると、そもそも優れたデザインに対して適切な対価を支払うこともできなくなってしまいます。
一部では多重下請け構造が続く
現代の日本産業では予算の組み方や発注、取引方法が偏っており、デザイナーの地位の向上を妨げる可能性があります。
例えばデザインを伴う広告やキャンペーンなどを広告代理店や大規模制作会社に丸投げしているクライアント企業が多く、場合によっては実際にデザインを行う会社やデザイナーの間に多くの中間マージンが発生してしまうこともあります。
実際にデザインをするデザイナーがクライアント企業に近い距離で仕事ができる様になることが、給料向上の鍵となります。
WebデザイナーやUIデザイナーが年収・給料をアップさせるためには
それでは、WebデザイナーやUIデザイナーが給料アップさせるためにはどうすればいいのでしょうか?
全ての人がグローバルで挑戦をするのはハードルが高いと思われるため、日本国内で活躍して給料をアップしていくための方法を考えていきたいと思います。
ここでは、WebデザイナーやUIデザイナーができる給料アップの具体的な方法について紹介します。
- ✅現在の会社でスキルアップ
- ✅フリーランスになる
- ✅キャリアアップ・転職する
- ✅事業会社に転職する
- ✅業界専門転職エージェントに相談する
現在の会社でスキルアップ
WebデザイナーやUIデザイナーとしてスキルアップすれば、給料を上げることができる可能性が高いでしょう。Webサイトだけでなくアプリなどのデザインもできる様になる、シンプルなコーポレートサイトだけでなくサービスサイトやECサイトも手掛けられる様になるなどのスキルアップが考えられます。
最近では、WebデザイナーやUIデザイナーが、UXデザイナーも兼務して、ペルソナ設計、カスタマージャーニーマップの設計、コンセプトの説明、プレゼンテーションを行うケースも増えています。場合によってはPM (プロジェクトマネージャー) を務めるケースも出てきています。こういったマルチスキルのデザイナーは大変重宝されるでしょう。
スキルアップをして自分が携わる業務が増えたり、専門的な業務を担当することにより、他のWebデザイナーやUIデザイナーとの差別化が実現して、給料アップを目指すことができます。
フリーランスのデザイナーになる
現在働いている職場を思いきって退職し、フリーランスとして独立するのも選択肢の一つです。
高いクオリティを実現できる、フリーランスのWebデザイナーやUIデザイナーであれば、仕事を受注すればするほど自分の給料を上げることができ、収入アップの道筋が描けるでしょう。
ただし、プロジェクトを継続的に受注できなければ、むしろ給料が下がってしまう可能性もあるので、慎重に検討する必要があります。
制作会社などから仕事を引き受けるのか、もしくは自身の看板を掲げて仕事を集めるのかなど、会社勤めとは異なった工夫が求められるでしょう。
キャリアアップ・転職する
今よりも給料が高い企業に転職するなどのキャリアアップが実現できれば、給料アップが期待できるでしょう。
特に希少価値の高い、UX/UIのスキル、DXの知見、サービスサイトの実績などがあるデザイナーでは転職する企業によっては、年収を100万円以上アップすることもできるでしょう。
特に近年では事業会社のインハウスデザイナーの待遇が向上しています。これまで事業会社では、自社のプロダクトデザイン・開発を外部委託することが多かったのですが、よりスピーディーな改善、コアメンバーの確保、総合的なコスト計算の観点から、自社でUI/UXデザイナーを採用・確保するケースが増えてきています。もし年収を重視するのであれば事業会社へのキャリアアップを視野に入れると良いでしょう。
または、デザイナーとしての経験を活かして、アートディレクター、クリエイティブディレクター、マネージャー、PdMなどの職種にキャリアアップする選択肢もあるでしょう。現役の第一線で活躍するデザイナーから、より広い視野を持ってクオリティやプロジェクトを監督するポジションの需要も高まっています。
事業会社に転職する
年収アップの方法として転職を検討した際に重要なポイントとして事業会社に転職するということが検討できるでしょう。事業会社とは、自社でサービス、アプリなどを運営している会社を指します。それに対して制作会社は、主に事業会社に向けてデザインや開発のサービスを提供する会社です。近年、事業会社はデザインや開発のプロセスを内製化する傾向にあり、デザイナー、エンジニア、ディレクターなどの職種について積極採用を行なっています。そのため一般的には制作会社より事業会社の方が給与水準が高い傾向にあります。
少し前までは事業会社の仕事はルーティンだと思うデザイナーも存在していたかもしれませんが、近年はその点についても変化していると考えられます。一つのサービスについてじっくり向かい合い、戦略、コンセプト、ターゲット・ペルソナ策定、デザインリサーチ、UXデザイン、UIデザイン、ビジュアルデザイン、開発など様々なプロセスに深く関わることができ、高いデザイン力を発揮する機会も多いのです。そのため制作会社でスキルを磨いたデザイナーをはじめとする経験者クリエイターの有望なキャリアアップ先として検討されています。
業界専門転職エージェントに相談する
経験者デザイナーの場合、自身で仕事を探すより、専門転職エージェントに依頼することで様々なメリットを享受できることがあります。より良い条件の会社やポジションを紹介してもらえる、採用確度を高めるためのアドバイスや添削サービスを受けられる、最新の転職市場の動向を教えてもらえる、などがあるため、まずは気軽に相談をしてみると良いでしょう。
クリエイター支援メディアのBRIK JOBではカウンセリングサービスを行っています。Webデザイナー、UIデザイナー、UXデザイナー、グラフィックデザイナー、モーションデザイナーなどの様々なデザイナーに向けて、お持ちのスキルがより輝き、年収アップを実現できる環境をご提案できます。
先述の事業会社へのキャリアアップにおいてもBRIK JOBのカウンセリングサービスで様々な可能性が相談できます。当然ではありますが、事業会社であればどこでもいいわけでもなく、やりがい、仕事の楽しさ、将来性、個人のキャリアにとってプラスになるか、など様々な視点から適切なキャリアアップをアドバイスできることでしょう。
年収・給料アップして稼げるWebデザイナー・UIデザイナーになるには
本記事では世界のデザイナーの年収・給料事情や、グローバルで活躍できるデザイナーの条件、日本のデザイナーの年収・給料が低い理由などについて詳しく紹介してきました。
日本国内にいて年収・給料アップを実現し、稼げるWebデザイナー・UIデザイナーになるためには上記の、スキルアップ、フリーランス、キャリアアップ・転職などの選択肢が挙げられます。
現在勤めている企業でも、勤続年数が長くなりスキルアップが続けば給料が上がる可能性があります。ただし会社の業績や、行っている仕事の特性から年収・給料の上限が決まってしまう可能性もあります。
今後、中長期的に給料アップを目指すのであれば、今回紹介した方法を検討してみるのもいいでしょう。